Dhubシチュー(「砂漠のシチュー」から)
「キャーッ!」20歳セイヤは、体が凍ったかの様に、指を振って向こうを指していた。ベオルンは長刀のなたを握って走って来た。見ると、70センチのトカゲが葉っぱの下からのっそり出てくるではないか。いくら動物好きなセイヤでも、これは…。
「なんだ。ただのアガマじゃないか。」(大トカゲ、最大75センチ)ベオルンは笑ったけど、セイヤの顔を見るとすぐ真面目な表情に変えた。「ゴメン、ゴメン。慣れてないよね。ボク、父さんと一緒にここで育ったから、Dhubシチューは、よく食べてるけど、セイヤは違うからね。」40歳のベオルン王子は、子供のころ、砂漠を思いっきり走り回っていた。
ベオルンは、トカゲの方を向いて「今晩の献立は決まり。」と言って、握っていたマチェーテを使い始めた。今度悲鳴を上げるのは、アガマの方だった。アガマの太いしっぽの肉は特に美味しいと、ベオルンは言いながら調理した。野菜をいっぱい使ったスープ、肉を細かく切って、ベオルンの好きなスパイスを加えたら、ホラ、トカゲってわからないぐらい。
70センチのとかげが出てきた
暑い一日の仕事を終えて帰って来た60歳ハタクのために準備されていたのは、トマトシチュー。お腹を空かせていたハタクは、食べながら、聞いた。「今晩のチキンシチュー、美味しいね。誰が作ったの?ベオルン?」
「そうだよ。こんばんは僕が作ったよ。」ベオルンは、セイヤにウインクして、それしか言わなかった。それ以上の説明は、夜、寝る前でいい。
だって、今日は、砂漠でアルキスマ・ダイヤモンド(トパーズのような準宝石)が見つかり、ハタクは袋いっぱい集めて、良い気分になっていたから。せっかくの喜びを、変なびっくりで、つぶしたくないよネ。
END